
6月になってから、羅臼岳登山を計画中の本州の方からの問い合わせ電話が急に増えてきました。
そこで、皆様からよく質問される点について、普段お答えしているような内容を下記に載せておきたいと思います。
先ずは・・・
・日本百名山のひとつ羅臼岳は、標高こそ1,660 m と低めですが、なんと言っても北海道の知床半島にそびえる山ですので、なめてかかると痛い目に遭います。本州の3,000 m 級の山に登るくらいの覚悟でのぞんで下さい。
せめて事前に登山地図くらいは購入してから、本格的な計画を立てるようにして下さい。
・羅臼岳の正式な山開き は、毎年7月の第1日曜日です。
今年(2009年)ですと、7月5日になります。
・羅臼岳には登山口が2つあります。
岩尾別(いわおべつ)登山口(斜里町側)と、羅臼温泉登山口(羅臼町側)です。
どちらの登山口も、毎年ほぼ同じ日に山開きとなります。
・山の名前が「羅臼」岳なので、羅臼町側から登るのが一般的と誤解される方が意外と多いようです。しかし、実は斜里町側(岩尾別ルート)から登る方が一般的です。岩尾別ルートの方が、羅臼温泉ルートよりも登山道がしっかりしており、距離も短く、登山口から頂上までの標高差も小さいからです。
初めて羅臼岳に登る方には、絶対に岩尾別ルートをおすすめします。
・羅臼岳の2つの登山口間を縦走したい場合は、
羅臼温泉から羅臼岳山頂を経て、岩尾別側へ下りることをおすすめします。
下山時のルートがわかりやすく、膝などにかかる負担も少なくて済むからです。
・羅臼側へ下りてくる逆コースの縦走は、初めての方には危険ですので、おすすめできません。
後述のお花畑トラバースルート付近の雪渓で迷ったり、屏風岩の雪渓を下りすぎてサシルイ川上流へ迷い込むなど、遭難騒ぎ が毎年のように起きています。
羅臼温泉ルートを歩いた経験のある方が一緒にいる時だけ、羅臼側へ下りてくるようにして下さい。
・2009年6月19日時点の情報(ガイドの桜井氏:知床ファクトリー http://www13.plala.or.jp/shiretco/)によると、
岩尾別ルートは、極楽平を過ぎた仙人坂付近(標高約900m)より上で残雪が多く、ルート不明瞭。大沢の雪渓には大量の残雪。
羅臼温泉ルートは、泊場(標高約800m)の上に残雪があり、屏風岩より上は大雪渓状態、とのことです。
・7月初旬の山開き後も、7月下旬まで(雪の多い年だと8月上旬まで)は、登山道を大きな雪渓が覆っている場所がいくつかあります。
岩尾別ルートでは、「大沢」の雪渓(写真A)。
羅臼温泉ルートでは、泊場の少し先(標高850m付近)にある沢右岸の雪壁(写真B)、
「屏風岩」の雪渓(写真C)、
そして屏風岩雪渓を登りきった後に続く、岩清水直登ルートとお花畑トラバースルートの分岐点より上を覆う大雪渓(写真D) がそれです。
・特に羅臼側の雪渓では、7月いっぱいまでは本格的な10本-12本爪アイゼンやピッケルが無いと、不安があります。6本爪の軽アイゼンではカカトに爪がないため、急斜面では転びやすいです。万一滑落した場合、ピッケル無しではなかなか止まりません。スタッフの実体験です(汗)。
写真A:大沢の雪渓(07年7月14日撮影)
写真B:泊場の先にある、沢右岸の雪の壁(06年6月27日撮影)
写真C:屏風岩の雪渓(07年7月1日撮影)
写真D:屏風岩の上に続く大雪渓(07年7月1日撮影)
写真E:写真Dの範囲の遠景-泊場より撮影(07年6月20日)
・斜里側の大沢の雪渓の場合、登山者数が非常に多いため、山開き後しばらくすると雪が階段状になり、アイゼンなしでも登れてしまうことがあります。しかしそのようなルートはよく渋滞しますので、すれ違い時に脇へよけたり、渋滞を避けて人があまり歩いていない場所(雪渓の端の方)を歩く時に滑落しないよう、十分な注意が必要です。
・雪渓の中にある大きな岩の近くは、岩の周りだけ雪がとけていて、近づきすぎると雪を踏み抜いて穴に落ちることがあります。そのような転落や滑落、自分の体力を過信した結果の消耗などにより、大沢の雪渓からヘリコプターで運ばれる方がほぼ毎年います。
・アイゼンが無いからと言って、正規ルートを覆っている雪渓を大きくよけて、土の露出している場所を踏み荒らすのはやめて下さい。高山植物が泣いています。
・トイレは各登山口にしかありません。
事前にトイレを済ませてから登り始めて下さい。ここ数年、水場やキャンプ指定地周辺で糞尿のニオイや使用済みティッシュの放置が目立ち、問題となっています。ティッシュはなかなか分解されず、長期間山の美観を台なしにします! ティッシュは必ず持ち帰りましょう。また携帯トイレを使用して、糞尿の持ち帰り推進にご協力ください。
携帯トイレは、知床自然センターや羅臼ビジターセンターなどで販売しています。
・羅臼岳のみに登る場合は、基本的に各登山口からの日帰り登山になります。
休憩時間も含めると、岩尾別ルート往復で8時間以上、羅臼温泉ルート往復では11時間以上の行動時間になってしまうことがあります。
お盆以降ならば雪渓歩きは無くなりますが、日が短くなって昼間の時間が13時間以下になります。早めの登山開始と、早めの下山が重要です。
・携帯電話は、頂上付近や屏風岩の上付近では比較的通じます。ただし携帯電話会社によっては通じにくいこともありますので、事前に携帯会社などに通話可能エリアをご確認ください。
・羅臼岳登山道には、よくヒグマが出てきます。
バッタリ遭遇するのが一番危険ですので、鈴を鳴らす、頻繁に声を出すなどのヒグマ対策を十分にして下さい。背中を見せて走って逃げるのは自殺行為です。
熊撃退スプレーの携行もおすすめです。万一の時に有効な反撃手段があるというだけで、安心感が全然違います。そのため、実際にヒグマと出会っても落ち着いて行動することができ、結果としてスプレーを使うような危険な状況にならないで済むことになります。ただし腰のベルトの所など、すぐに抜ける場所に着けておきましょう。ザックの中にしまっておいたのでは、意味がありません。
熊撃退スプレーは、当センターの他、知床自然センターや木下小屋などでレンタル(1000 円 / 日)しています。ぜひご利用ください。
・人間を見てもまったく警戒しない・逃げようとしないヒグマが長時間登山道の上に居座り、帰り道をふさがれたパーティーが、夜にやっと下山できた、というような事例も近年発生しています。下山前に日が暮れた時のために、ヘッドランプも忘れずに持って行きましょう。
・羅臼岳には避難小屋がありません。
山の上で宿泊する場合は、キャンプ指定地でのテント泊になります。ヒグマがたくさんいる場所での野営になるため、食料は常設されているフードロッカー内に保管し、テント内には絶対に置かないようにして下さい。もし知床のヒグマがテントやザックを食料のありかとして学習してしまうと、過去に他の山域で起きたような惨劇の原因になりかねません。
<羅臼岳登山の前に準備すべき地図などの例>
・山と高原地図 利尻・羅臼 斜里・阿寒 2009 昭文社 945円
・国土地理院 2万5千分の1地形図 羅臼、知床五湖、硫黄山
・アタック 知床連峰 北海道地図株式会社 1000円*
・シレトコガイドマップシリーズ No.1 知床連山 知床自然センター 210円*
・最新版 北海道夏山ガイド<6> 道東・道北・増毛の山々 北海道新聞社 (単行本) 2415円*
・羅臼岳・硫黄山自然観察ガイド 知床サイト (単行本) 1200円*
*印のついた4つは、羅臼ビジターセンターや知床自然センターの店頭で購入可能です。